2001年12月、現役の最高齢指揮者であった朝比奈隆が 93歳で亡くなりました。
彼は京都大学の学生オーケストラでヴァイオリンを担当して活躍しましたが卒業して一旦阪急電鉄に勤めました。しかし音楽への夢を断ち切ることができず、法学部を卒業後、再度文学部に入学してオーケストラを続けました。やがて彼は京大オーケストラ第4代指揮者メッテルの後を継いで第5代指揮者になり、その頃から大阪音楽大学で教鞭を執るようになります。大阪フィルハーモニーの常任指揮者、音楽監督として活躍し、海外オーケストラへの客演やブルックナー演奏の巨匠として絶賛を浴びました。世界から認められた指揮者として日本では初めて文化勲章を受賞し、世界最長老指揮者として生涯現役でした。

(朝比奈隆の前任者である京大オーケストラ第4代指揮者のメッテルはロシア生まれのユダヤ人、ハリコフ大学法学部出身、ペテルブルグ歌劇場指揮者。ロシア革命後、奥さんが宝塚歌劇団の舞踊指導に招かれた縁で来日滞在した。)

朝比奈隆が「プロの音楽家からみた京大オーケストラ」と題して京都大学音楽部交響楽団75年史の中で語っている内容を一部ご紹介します

朝比奈氏「選び抜かれた秀才の集団だったら、教える方だって張り合いがあるわな。メッテル先生は『アタマ、アタマ』って言っておられたもん。そういうことをメッテル先生はプロのいる前でおっしゃるから問題があったんだけど。だけども、湯川秀樹ほどできなくてもいいけど、頭が悪いのではどうも。サッカーでもね、体でやるんだけど、バカが一人入ったら負けますもん」

朝比奈氏「大学のオーケストラのうまい順っていうのは、正確じゃないけど、大学の入学の難しい順ですよ。君らは今の大学(京大)にいるからそういうこと思わないんだけど、これは学閥でもなきゃ何でもなくって、頭の順だって。いくら閥を作っても、バカが作ったってだめだよ」

朝比奈氏「アマチュアであろうが何だろうが、正確で緻密な訓練を受けるっていうことは当然だな。それがいやなら、やめるんだな。プロのサッカー選手だろうが、アマのサッカー選手だろうが、金もらうか会費払うかの違いだけで、スポーツやってるのぞみ方に変わりはない。アマチュアっていうのは、負けてもいいとか下手でもいいとかいうのと違うからね」

京大の身内意識を持って語っているせいか、多少激しい発言も見られますが、ここで朝比奈隆が語っていることは、サッカーに例えながら音楽の本質をついているものです。頭を使わない、あるいは使うべき頭が弱い音楽家は真の意味の音楽家ではないのであり、そのような人たちはプロであってもアマチュア音楽家であると言っているのだと思います。

日本の音楽大学は教養過程を終えてから専攻を選ぶというシステムではなく、入試の時点で音楽の専攻、その上に専攻楽器まで決めてしまいます。その結果として、普通高校から東大や京大に入学できる頭の人が音楽大学に進学することは殆どないのが現状です。音楽大学の入試は一般教科を軽視あるいは無視して専攻実技だけが重視されます。

実技それは指と腕のスポーツのようなものです。音楽はスポーツのレヴェルに留まっていては何の意味も成さないのです。イコール式は単なる指のスポーツとしてのピアノ演奏に警鐘を鳴らすものです。頭を使うことは内的聴覚を使うことです。内的聴覚を育てるのは相対音感です。イコール式は相対音感による教授法を提唱しています。