「ドレミファソラシ」という名前(シラブル)にはそれぞれ固有の機能がある。「ド」は大黒柱の主音であり、残り6個のシラブルは「ド」に中心帰一する。「シ」はそのすぐ上にある半音を前もって感じさせる役割がある。これを導音と呼び「シ」は自分のすぐ上にある半音を主音として通告する役割を持つ。一方、「ソ」は完全4度上の音を主音として通告する役割を持つなど、シラブル固有の機能がある。

ハ長調の音階各音を7人家族に例えると、ド=お父さん、ソ=お母さん、ファ=長男  レ=おじいさん、ラ=おばあさん・・・・というように、個々の家族の苗字や名前は知らねど、「ド」と言えばお父さんだとわかる。どの家も、つまりどの調も、「ド」はお父さんだ。常にお父さんの役割は「ド」と呼ばれる。これが「移動ド読み」である。例えばト長調の場合は「ド」が5度高くなるので鍵盤名の「ソ」に移動する。音高や鍵盤名がどうであれ、お父さんを「ド」と読み、主音だとわかるのである。「ド」と読む音高や鍵盤名が色々な位置に移動するので「移動ド読み」というわけである。

対する「固定ド読み」は、「ド」と読む音高や鍵盤名が移動しない。「ド」と読む音高や鍵盤が固定しているから「固定ド読み」という。7人家族に例えるなら、「ド」と読みながら、その役割はお父さんだったり、お母さんだったり、調によって様々に変化する。従ってお父さんのシラブルが何かさっぱりわからない。お父さんなのに「レ」や「ソ」などと読むことになる。「固定ド読み」は、音高や鍵盤名読みであり、シラブルのもつ機能は反映されない。

一般的に、自分で音程を作るヴァイオリンや声楽は「移動ド読み」、鍵盤楽器のように押すだけで音程が作れる場合は「固定ド読み」が用いられ易いようである。
或いは単旋律は「移動ド読み」、同時に沢山の音符を奏する場合は「固定ド読み」が用いられると言ってもよいだろう。
しかし調性音楽は「移動ド読み」で理解されるべきであり、これを「固定ド読み」で演奏するのは作曲家の方法に外れるのである。無調の音楽ならば許されるというものだ。

我々は「移動ド読み」と「固定ド読み」の双方に「ドレミファソラシ」というシラブルを用いているが、「移動ド読み」では音階の機能を示し、「固定ド読み」では音高や鍵盤名を示す。意味内容の違うものを同じシラブルで読むという矛盾が生じている。例えるなら「「高い」という言葉を使っても「高い山」 か 「確率が高い」 か わからないようなものである 。「ドレミファソラシ」の混用は発案者のグィードも驚き開いた口がふさがらないというところだろう。グィードが発案した「ドレミファソラシ」は音高と無関係であり、「移動ド読み」だったからである。現在の「ドレミファソラシ」が音高や鍵盤名を示すということなどグィードは想像だにしなかっただろう。