異名同音について考えてみます。

質問:「嬰ト」と「変イ」は同じ音ですか?


答え1:鍵盤楽器では同じ鍵盤、異名同音です。


答え2:ヴァイオリンでは異なる音、「嬰ト」は「変イ」より低い音です。





質問:「ハー嬰ト」と「ハー変イ」はどちらが美しい響きですか?


答え1:鍵盤楽器ではどちらも同じ鍵盤、同じ響きです。


答え2:ヴァイオリンでは異なる響き、「ハー嬰ト」は増5度なので不協和音程、「ハー変イ」は短6度なので協和音程です。




2つの質問から明らかになること、それはヴァイオリンにはできることが鍵盤楽器にはできないということです。
鍵盤楽器は演奏中に音程を微調整できないので、異なる2つの音を一つの鍵盤で間に合わせるしかないという宿命を負っています。
異名同音とは「嬰ト」でもなく「変イ」でもない、妥協の音です。


どのみち、帯に短したすきに長しの異名同音で切り抜けるしかない鍵盤楽器は、試行錯誤を経て、今では1オクターヴを機械的に12等分した平均律が君臨するに至りました。


平均律の鍵盤楽器は、どの音程も半音の数の和でしかなく、金太郎飴です。
従ってどの調で弾いても金太郎飴です。

平均律の鍵盤楽器で弾く限りは、「バッハ平均律クラヴィーア曲集」を難しい調で演奏しても金太郎飴ですから、音階組織や和音の響きに何の変化もありません。

調を変えるとピッチの変化が起こっているだけなのですが、これを調性格が変わったと勘違いする人も少なくないようです。


音楽を正しく理解するためにも、ハ長調とイ短調に移調して弾いてみてはいかがでしょうか?
イコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集