クラヴァールスクリーボと言われてもそのスペルと意味が想像できないのは当たり前です。何故ならこれはエスペラント語だからです。
クラヴァールスクリーボとはオランダ人のポトが創成した鍵盤楽器記譜法の名前です。
1951年にユネスコ国際音楽評議会に提出して世界の批評を求めたものです。

その記譜法とはどんなものか、それは丁度オルゴールの発音部にある金属ロールと思っていただければ結構です。金属ロールの沢山の突起が音符、突起ではじかれて発音する櫛が鍵盤にあたります。
従来の五線記譜法は横に読みますが、クラヴァールスクリーボは金属ロールのように縦に書かれています。

譜表は従来の五線を縦にしたものとは意味が全く異なり、それは視覚的に鍵盤を表した5線です。
すなわち縦に引かれた五線は等間隔ではなく、丁度鍵盤の黒鍵の2本と少し間を開けて黒鍵の3本の間隔になっています。

従来の五線記譜法ではG#が「線」の音符であれば異名同音のA♭は「間」に書きまが、黒鍵五線譜では両方とも同じ黒鍵を表す「線」の上に書くので#♭は必要ありません。
しかも親切に黒鍵線上の音符は黒く塗りつぶされており、弾くべき鍵盤がピアノの黒いキーであることまで表しています。楽譜がピアノの鍵盤を視覚的真似た形で無調的に表わされています。

ここでは黒い音符は黒鍵を白い音符は白鍵を弾くこと表し、音価は音符間の距離だけで示されます。

クラヴァールスクリーボは鍵盤の配列に似せて記譜する方法です。例えばシェーンベルクのピアノ曲のように、すべての音符にいちいち#♭をつけて記譜しなければならないような場合にクラヴァールスクリーボは合理的に弾くべき音を表すのに好都合です。
しかしその合理性も1オクターヴ12個の鍵盤までで、微分音の記譜まではできません。

クラヴァールスクリーボが多数出版されたというわりには、長年ピアノ教育に携わってきた中で一度も出合うことがありませんでした。あまり普及しなかったのは、楽譜を縦に読むという習慣がこれまでになかったからではないでしょうか。英語のアルファベットを一文字づつ縦に書かれると読む気がしません。

新しい視覚的な鍵盤楽器記譜法として登場した記譜法でしたが、時代は電子音楽や偶然性の音楽でありそれを記譜することには無理があります。
現代音楽の記譜法は作曲家が、独自の読譜ルールを説明書きするという図形楽譜の方向に進み、一定の記譜法が未だ見出されていません。
21世紀の記譜法を提案します。、イコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集