ケレタート著「音律について」から調性格のホ長調を書き出してみます。

####ホ長調の性格として暗いもの

マッテゾン・・・疑念に満ちた状態、死ぬ程辛い悲嘆
フォーグラー・・身を切るように辛い
クラーマー・・・尊大さ、癪に障る

####ホ長調の性格として明るいもの

シリング・・・・・悲しみの表現ではなくむしろ聖なる愛、率直         さ、純粋な楽しみ
シュテファニー・・豊な輝くもの
マルクス・・・・・明るい太陽の壮麗さのように晴れ晴れと明る         い
ベック・・・・・・精神的な暖かさ
ミース・・・・・・優雅、愛らしい、素朴
リューティー・・(モーツァルトのホ長調)気高く品位に満ちた気分、朝の気分
シンドラー・・・(キルンベルガー音律に基づいて)祝典的な表現に適している

調性格論は普通どのような音律に基づくものなのか書いてない場合が多いので、仮に同一人物が、音律の違うホ長調を聴いた時にどのような違いがあるのか不明です。

上記の調性格論を読むとホ長調は明るいものから暗いものまで実に様々なものが列挙されており、一定の傾向としての調性格が見えてきません。

ではバッハ平均律クラヴィーア曲集におけるホ長調はどうでしょうか。
http://ml.naxos.jp/default.asp

1巻ホ長調プレリュード・・・幸福な牧歌的情緒→明るい
  ”  フーガ   ・・・若々しい活気と喜び→明るい
2巻ホ長調プレリュード・・・穏やかで淡い美しさに輝く→明るい
  ”  フーガ   ・・・ラファエロ的な柔和な美しさ→明るい

バッハ平均律クラヴィーア曲集におけるホ長調は調性格論者たちの意見と異なり、明るく穏やかな一定の傾向が見られます。

バッハの平均律クラヴィーア曲集ではホ長調の調性格が一定しているので、他の調で弾くと、明るく穏やかな調性格が消えてしまうのでしょうか。

バッハは今まで使えなかった難しい調も含めて24すべての調が使えるような独自の調律法でこの曲集を演奏しました。
そのためにはすべての長3度を広く取って、今日の12等分平均律に非常に近い調律を行う必要がありました。
12等分平均律に近いということは調性格が殆んど存在しないということを意味します。

従って、平均律クラヴィーア曲集の中のホ長調に見られる明るく穏やかな性格は音楽の曲想そものの中にあるのです。ホ長調であるがゆえに明るく穏やかなのではなく、何調で演奏しても明るく穏やかな曲なのです。

このことを理解したら「バッハ平均律クラヴィーア曲集」をハ長調とイ短調に移調して弾くことに抵抗を感じなくなるでしょう。
抵抗を感じないだけではなく、この2つの調だけが、音楽の正しい理解に繋がる道なのです。
 イコール式