トニック・ソルファ法とは主音の「ド」を中心に据えた1種の記譜法とそれに基づいた視唱指導システムです。トニックは主音の意味で、イギリスのカーウェン(1816ー80)が考案しました。

カーウェンは会衆の讃美歌唱を改善する目的で視唱指導法の研究に取り組みました。やがて彼は「グイードの手」のソルミゼーションと同様に、相対音高を耳で知覚することを基にして讃美歌の旋律を簡単に読み取る方法を完成させました。その方法とは従来の5線記譜法を使わずに、文字と点や線を使って音階を表すものでした。文字譜の発展ぶりは目覚しく、あっという間に何万人もの会員をもつ全国的な組織に成長しました。そしてトニック・ソルファ音楽カレッジやトニック・ソルファ楽譜出版社まで創立するに至りました。トニック・ソルファ法はイギリス全国のアマチュア合唱団に定着したに留まらず、学校教育でも公認の方法として採用されるほどになりました。

しかし年月とともにトニック・ソルファ法の欠陥が露呈してきました。それはヘンデルの「メサイア」の文字譜が1890年までに約4万部も売れる一大勢力となったものの、トニック・ソルファ譜になれた人々は本格的な5線譜を前にすると訓練を受ける前と同様にほとんどそれを理解することができないという問題が出てきました。トニック・ソルファ譜の学習を5線記譜法の理解に発展させることが不可能だということが分ってきたのです。トニック・ソルファ音楽カレッジはこの欠陥を改善するべく、訓練の早い段階から5線記譜法の学習を組み込むという改革を行い、トニック・ソルファ法それ自体が学習の目的とならないように配慮しました。

「グィードの手」、ルソーの数字譜、カーウェンの文字譜などの根底にあるのは相対音感です。それは中心の音を定めてそこからの距離によって、音の機能を分りやすく理解する方法です。
イコール式も根本原理は同じですが記譜法が違います。音階を数字や文字で表すのではなく、5線記譜法の音符を使います。5線記譜法は本来、固定ド読みに適していますが、イコール式はその5線譜を簡単に移動ド読みできるようにしました。その方法とは固定ド読みと移動ド読みが等しくなる調だけを用いる方法です。固定ド読みと移動ド読みが等しくなる調はハ長調とイ短調の2つだけです。この2つのモードですべての鍵盤楽曲を記譜するのがイコール式です。音楽を学ぶのにハ長調とイ短調だけを使いますので音の機能を簡単に理解することができます。