ドレミ法の起源は770年頃に書かれた単旋律聖歌「洗礼者ヨハネの賛歌」と言われています。この賛歌は初めの6行の出だしが「ウトut,レre,ミmi,ファfa,ソルsol,ラla」という音節になっています。
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famili tuorum
Solve polluti
Labil reaturm   以下省略
この音節に合わせて1行目は音高が「ド」から、2行目は「レ」からという具合に順次上行して「ラ」に至る単旋律聖歌です。このテキストと旋律に基づいて、音節を指の関節や指先に配したものがいわゆる「グィードの手」と言われているものです。「グィードの手」は1000年頃にイタリア人修道僧のグィード・ダレッツォが考え出したとされており、ソルミゼーションのシステムを史上初めて記録したものと言われています。それ以来数世紀にわたって引き継がれていったのは6つの音節をC,G,F上に配するシステムでした。Cから始まる6音音階は「自然な」、Gは「硬い」Fは「軟らかい」ヘクサコードと呼ばれました。最初の音節である「Ut=ウト」は17世紀にギベリウスによって発案された「Do=ド」に変わりました。

「洗礼者ヨハネの賛歌」を起源とするドレミ法は音高の絶対的なピッチとの関係はありませんでした。つまり、西洋の音楽の起源は絶対的ピッチとの関連を持たない階名としてのドレミ法しか存在しなかったのです。やがてピッチが固定し始めると共に音名という概念が形成されてきました。現在ではもともと階名であったドレミ法が音名としても使われるようになりました。両方に使うということは階名という音の機能を表すものと、音名という音の高さを即物的に表すものを同じシラブルで歌うという混乱を引き起こしました。例えばト長調の場合、階名では「ドレミ」、音名では「ソラシ」と、同一の鍵盤を弾いているのにそのシラブルが異なります。

こういった混乱を整理するために考案した方法がイコール式です。イコール式は階名の「ドレミ」と音名の「ドレミ」が一致する調、すなわちハ長調とイ短調で12の全長調を記譜する方法です。「グィードの手」が考案された時代は勿論のこと20世紀始め頃まで、絶対的なピッチは存在しませんでした。「ド」のピッチが歌手ごとに違う時代や町ごとに違う時代を経て世界標準音がa=440hzと定められたのは20世紀に入ってからのことです。現在ではピッチが440hzより更に上昇傾向にある反面、古楽演奏家はバッハやモーツァルト時代のピッチに立ち戻るべく415hzぐらいの低いピッチで演奏します。

イコール式は不確実で音楽の本質とは言えないピッチを自由にすることで、ドレミ法を統一しました。イコール式ではすべての音楽をハ長調とイ短調から移調したものとして考えます。バッハ「平均律クラヴィーア曲集」の全48曲をハ長調とイ短調に移調した楽譜を使います。
イコール式では属調への転調は常にハ長調からト長調、下属調は常にヘ長調、並行短調は常にイ短調と非常に解り易くなります。

移動ド読みと固定ド読みのどちらが良いかという論争は一長一短で決着をつけ難い問題です。イコール式の鍵盤楽器教授法は移動ドと固定ドの長所を採用した解決法の一つとして提案させていただきました。イコール式によって音楽の構造が一目瞭然によく分り、相対音感をさらに伸ばすことができるでしょう。相対音感は人間が生来持っているものであり、大人になってからでも伸ばすことのできる能力です。しかも、相対音感こそ音楽の構造を表すものなのです。