バッハの鍵盤楽曲の中からホ長調についてを調べてみましょう。

当時最も傑出したオルガン奏者であったバッハは#♭3個までの調でオルガン曲を書きました。例外的に#4個のホ長調が1曲だけあります。それは「プレリュードとフーガ ホ長調 BWV 566」です。しかしこれはクレープスやケルナーが筆写した手稿譜ではハ長調になっており、ホ長調でもハ長調でも良いような曲です。

バッハはオルガン以外の鍵盤楽曲も#♭3個までの調が大半を占めています。#4個のホ長調は数えるほどしかありません。ホ長調は以下の8曲です。
インヴェンション6番 BWV 777
シンフォニア6番 BWV 792
フランス組曲第6番 BWV 817
平均律クラヴィーア曲集 第1巻の9番 BWV 854
同上          第2巻の9番 BWV 878
6つの小プレリュード BWV937
カプリッチョ「ヨーハン・クリストフ・バッハを讃えて」BWV 993
ヴァイオリンとチェンバロのための6つのソナタ BWV 1016

それではここでバッハが書いたホ長調の各曲の性格を一つづつ見てみましょう。
インヴェンションは軽やかで愛嬌があり、シンフォニアは田園的、フランス組曲は6曲中最も輝かしく、平均律のプレリュードは穏やかな気分、6つの小プレリュードは軽快なアルマンド、カプリチョは若さにあふれた活発な気分、ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタは穏やかな田園的気分です。
マッテゾンが言う調性格のホ長調は悲しい曲想ですが、バッハのホ長調の8曲は明るく活発、静穏な癒しが感じ取れます。

マッテゾンはミーントーン音律におけるホ長調の性格、バッハは不等分平均律におけるホ長調の性格です。調性格は音律が違えば当然違ってきます。12等分平均律のホ長調はマッテゾンやバッハともまた違った性格になります。
ただしここではっきりしている事は、12等分平均律のホ長調は1種類、それ以外の不等分音律のホ長調は無限にあるということです。
さらに言えることは12等分平均律におけるホ長調は特有の性格を持たず全長調が同じものになるということです。不等分音律においてはこのようなことは起こりません。