ホ長調と一口に言っても音律によってその音階構造が違ってきます。

ミーントーンのホ長調は遠隔調に属します。主和音と下属和音は純正の長3度ですが属和音は極端に広い長3度です。半音の「嬰ニーホ」は76セント、「嬰トーイ」は117セント、全音の「嬰ハー嬰ニ」は234セントとなり音階は特殊な緊張を生じます。

キルンベルガー兇離枋皇瓦麓舅族擦伐実囲族擦極端に広い長3度、下属和音は狭い5度です。半音の「嬰ニーホ」は92セント、「嬰トーイ」は103セント、全音の「嬰ハー嬰ニ」は204セントとなり音階は幾分平均律に近くなります。

ヴェルクマイスター靴離枋皇瓦麓舅族察属和音、下属和音ともに平均律とほぼ同じ長3度ですが、主和音と下属和音は純正の5どです。半音の「嬰ニーホ」は96セント、「嬰トーイ」は96セント、全音の「嬰ハー嬰ニ」は204セントとなり音階は平均律に近くなります。

マッテゾンはホ長調の性格を「死ぬほど辛い悲嘆」、フォーグラーは「身を切るように辛い」、クラーマーは「尊大さが際立ち癪に障る」、シリングは「大声の歓声、笑い喜びこそすれ、ホ長調にはまだ完全に楽しんでいる様子はない」、シュテファニーは「太陽の壮麗さのように晴れ晴れと明るい」、ベックは「精神的な暖かさ」、ミースは「耳をつんざくような、愛らしい」などと主観的で相反する性格が述べられています。

バッハのホ長調とハイドン、モーツァルト、ベートーベンのホ長調はそれぞれの作曲家が好んだ音律が異なります。ホ長調はそれぞれの作曲家の感受性によって独特の個性を持っています。

クルーサスは「審美論 1731年」において「十分な基盤があるとは思えないので、すべての音階を分類してしまったり、それぞれの音階に帰せられる効果や性格について語るのは差し控える」と述べています。