純正とは唸りを生じない美しい協和音のことです。
その昔、ヨーロッパの大聖堂で聖歌を歌う時、ハーモニーに唸りが生じると残響時間の長い大聖堂では非常に聴きづらい状態が発生しました。そこで人々は唸りを生じない響きを求めたのです。

聖歌は始めユニゾンで歌われましたが、やがて5度の平行進行で歌われるようになりました。そこで人々はまず5度が純正に響くことを求めました。
ピタゴラスの定理で有名なピタゴラス(BC 582生)が発見した音律は、純正5度を積み上げていって作るものです。
従ってピタゴラス音律は5度を純正に響かせるには最も適しており、当時のグレゴリア聖歌はピタゴラス音律で歌われました。

純正とは二つの音程に唸りを生じないものです。唸りが生じない音程は2つの音の振動数比が簡単な整数比になります。
最も簡単な整数比が1:2であり、これを1オクターヴといいます。
整数比の2:3は5度、3:4は4度、4:5は長3度です。
これをセント値に置き換えると1オクターヴは1200セント、5度は702セント、4度は498セント、3度は386セントになります。

ルネッサンスの時代になると、ハーモニーの主体は5度や4度から3度に変わってきます。
ピタゴラス音律の作り方にならって3度を作るとどうなるでしょうか。
「ハートーニーイーホ」と純正5度の702セントを積み上げて、「ハーホ」の3度を得る計算は以下のようになります。純正5度を4回積み上げるので702×4=2808セントが「ホ」になります。ここからオクターヴを引きます。1オクターブが1200ですから、2オクターブにあたる2400を引くことができます。2808−2400=408セントがピタゴラス音律における3度です。純正の長3度は386ですから、これは純正からかなり遠のいてしまいます。平均律の3度は400ですが、これでも純正3度より広いのに、ピタゴラス音律では更に広がって408にも達するのです。
ピタゴラスの長3度は平均律以上に幅が広くその響きは純正からかけ離れた極端なものです。
したがってピタゴラス音律の3度は使いものになりません。したがって音律は5度の響きを犠牲にしても3度の響きが美しく響くミーントーン音律が主流となっていきます。

大聖堂で3度のハーモニーが唸りを生じず歌えるようになるのは、ラミスの音律(1842)やミーントーン音律(1523)が確立されて後からになります。

二つの音は簡単な整数比のとき純正の美しい響きになり、人間が本能的に簡単な整数比のハーモニーを求めるという不思議さ、これは神の秩序であり、世界共通の真理、法則なのです。
何と言う不思議な神の秩序なのでしょうか。