長3度 (ドーミ、レーファ♯、ミーソ♯・・・・・等)は平均律では400セントの幅である。ところが、調律法を変えると幅が違ってくる。以下に様々な長3度を示す。

中全音律・・・386セント(純正)
キルンベルガー機ΑΑΑ386セント(純正)
ヴェルクマイスター掘ΑΑ390セント
12等分平均律・・・・400セント
ピュタゴラス・・・・408セント

最も綺麗にハモるのは純正の386セントである。その他はみな不順な音程である。現在世界の標準となっている12等分平均律も400セントと純正より音程幅が広く不純である。われわれの耳は不純な長3度に慣らされてしまったのか、自然な音感が麻痺してしまったのか、12等分平均律を平気で聞いているようだ。

しかし耳の良い音楽家たちは平均律の長3度を聞いて次のような言葉を述べた
「平均律の3度はあまりに耳障りである。これは杓子定規の音律に由来する」(ゾルゲ)
「平均律は非音楽的な人の耳をも汚すような3度の叫び」(ツァング)
「平均律の三和音のひどい響きは事実上きたない平均律3度のせいである」(ヘルムホルツ)

長3度、例えば「ドーミ」 は 「シ♯ーミ」 と記譜することもできる。この場合「ドーミ」は長3度、「シ♯ーミ」は減4度である。音楽理論上は異なる音程なのに、鍵盤上では同じになってしまう。同じ鍵盤を弾くのに、一方は協和音、他方は不協和音という矛盾。
鍵盤楽器以外(例えばヴァイオリン)なら、長3度と減4度を弾き分けることができるが、鍵盤楽器はどんな名手でも音程に関してはお手上げ状態である。鍵盤楽器奏者は自ら音程を作れない。ピアノ調律の時に作ってもらった音程を演奏するしかない。他の楽器のように、自分で音程の微調整をしながら演奏することはできない。

 《平均律クラヴィーア曲集》の第1巻4番、ハ短調フーガのテーマに減4度音程 「シ♯ーミ」がある。このテーマは重苦しく、十字架を背負って喘ぎながら歩く姿を減4度音程で示しているといわれる。しかし重苦しいはずの減4度=不協和音程は、楽譜の上だけのことであって、鍵盤上では、明るい長3度でもあるのだ。かくのごとき大きな矛盾が鍵盤楽器には存在する。鍵盤楽器は減4度、長3度どちらも妥協の音程である。どちらも不純な音程で、正しい長3度でもなく、減4度でもない。そして鍵盤上では同じ鍵盤、同じ音程である。

鍵盤楽器の同じ鍵盤を弾いて、長3度は明るい、減4度は重苦しいなどと区別するのは甚だ滑稽であることがわかる。
鍵盤楽器は長3度と減4度を弾き分けられず、両方とも同じ音程になってしまう。
このこと1つだけでも、鍵盤楽器に調性格のないことが理解できるだろう。