バッハの時代の調律法はミーントーンが一般的だった。
この調律においては、調号にシャープやフラットが沢山付く遠隔調は、極端な響きになり、使用することが難しかった。使えるのはシャープ、フラット3個ぐらいまでの調に限られていた。

ところが、バッハが理論上考えらるすべての調に挑戦し、《平均律クラヴィーア曲集》という歴史的金字塔を完成した。この時代はバッハだけではなく、同じようなことを試みた作曲家もあった。例えば

.泪奪謄哨鵝Johonn Mattheson 1681〜1764)
《規範的オルガニストの試験》:Exemplarische organisten-Prove 1719

▲肇薀ぅ弌次Johann Philipp Treiber1675〜1727)
《一風変わったインヴェンション:全ての音、和音、拍子記を用いた一つのメロディーによるアリア》
        :Sonderbare Invention : eine Arie in einzigen Melodey aus allen Tonen und Accorden         auch jederley Tocten zu componiren 1702

《通奏低音における正確なオルガニスト》 Der accurate Organist im General-Bass 1704

キルヒホフ(Gottfried Kirchhoff 1685〜1746)
《ABCムジカル:全ての調によるプレリュードとフーガ》 :L’ABC musical : Plaeludia und Fugen aus allen                                     Tonen (消失)


ミーントーン調律と違って、24すべての調が演奏可能な調律においては、美しく響く調と、極端に響く調という差異が薄れ、必然的にどの調も似たりよったりとならざるを得ない。その結果、何調という音階終止音による違いは薄れ、長調か短調かという違いのみになる。

ケラー(Hermann Keller 1885〜1967) は「平均律クラヴィーア曲集以来ようやく、調の性格と言う問l題が純粋に精神的なもの、作曲者と演奏者のなかにのみ存する問題となったのであった」と述べた。

前述のマッテゾンは後に、「どんな調もそれ自体ではその逆を作曲し得ないほど悲しかったり楽しかったりする事はない」と述べ、『新管弦楽法』で述べた調性格論を後になって自ら取り下げている

ゾルゲ(Georg Andress Sorge 1703〜78)はマッテゾンが『新管弦楽法』で述べた調性格論に対して、「調のアフェクト(情念)を述べる場合は、長調は楽しく愉快な感情に適し、短調は悲しく憧れに満ちた感情に適していると言えるだけである」と嘲笑した。

理論上考えられる24すべての調が自由に弾ける調律を、今、我々は使っている。したがって、調による性格の違いはお伽話の域を出ないのである。
どの調も同じという意味で”イコール式”と名付けた鍵盤楽器教授法は新しい教育法である。