バッハはWTC(平均律クラヴィーア曲集)に、理論上考えられる24すべての調を網羅しました。
1番のハ長調から24番のロ短調まで半音ずつ上昇する順序で網羅されています。
しかし、バッハがこの順序で一気に作曲したわけではありません。
バッハは長い時間をかけて改訂に改訂を加えつつ、順不同て完成させました。

 改訂に改訂を加えた複雑な成立過程を見ると、いくつかの曲でバッハ自信が移調を試みたことがわかります。
例えば、ハ長調の早稿を嬰ハ長調に移調して編纂するなどの措置をとりました。
これは、ベーレンライター原典版 平均律クラヴィーア曲集第2巻 P.352 を見ると分かります。

 またバッハは、嬰ニ短調の曲を編纂するにあたって、最初にニ短調で作曲し、それから半音高く移調して嬰ニ短調を得るなどの措置をとったようです。
WTC(平均律クラヴィーア曲集)の世界的権威である富田庸の研究によると、半音高く、あるいは半音低く移調された曲は少なくないということです。
バッハ全集12巻(小学館)P.77 の「ロンドン自筆譜を記譜中に移調を試みたと考えられる根拠が修正箇所にみられるもの」富田庸 著 をご参照ください。

 平均律クラヴィーア曲集を編纂するに当たって、バッハ自身が移調した理由を考えてみると、バッハの目的が「調性格の確立」ではなく、理論上考えられる24の調を残らず網羅するという一点にあったからではないでしょうか。

ならば原調にこだわる必要はないでしょう。
イコール式は音楽の構造を深く理解し、バッハのフーガをより親しみやすいものにすることの方が大切だと考えます。

全調をハ長調とイ短調に移調した《イコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集》 橋本絹代 編著 カワイ出版 をお試しください。