演奏時間が長過ぎる曲は沢山ありますが、一人の人間の一生の間では曲の最後まで聴くことができないほど長い曲もあります。

演奏時間の長い順に

639年・・・ ケージ「ASLSP」
336年・・・ シュトックハウゼン「336年」
102年・・・ ノールハイム「Poly-Poly」
5年・・・ 小杉武久「革命のための音楽」
12日・・・ ヤング「12日間のブルース」
28時間・・・ シュトックハウゼンのオペラ「光」
18時間・・・ サティー「ヴェクサシオン」
15時間・・・ ワーグナー「ニーベルングの指輪」

ワーグナーの長大な「ニーベルングの指輪」は有名ですが、その前のサティーの曲は日本で実際に演奏されました。約40年前に、日本の大御所の作曲家、湯浅譲二らによって奏者のリレー式で実際に18時間かけて日本初演されました。日本初演のあとは続いてないようですが。

演奏時間に史上最長の曲はアメリカの作曲家ジョン・ケージ(1912〜1992)が作曲した「ASLSP」です。ケージが作曲した「出来る限りゆっくり」というオルガン曲の意図を汲んで、639年もかかる作品になりました。演奏はケージの死後にジョン・ケージ・オルガンプロジェクトが企画し、現在演奏が進行中です。

639年かかる曲はドイツの教会で2001年9月に演奏が開始されました。
約5年後の2006年1月に最初のコードから2番目のコードに移り、このコードは数年間鳴り響くことになります。
オルガンは新たな音の必要に応じてパイプを継ぎ足していく方法で
演奏されます。
639という数字はこの教会のオルガンが設置された1361年から演奏開始の2001年までの年数が639年になることから名付けられました。

ジョン・ケージ「出来る限りゆっくり」オルガンプロジェクト

プロジェクトは「変化の早い現代社会における平静と緩慢な時の流れの再発見」といったコンセプトを語っています。
639年は我々の時間概念からすると、とてつもなく長い曲ですが、宇宙的な時間から考えるとほんの一瞬かもしれません。
天地創造から今日までを考えるだけでも無限大の時間ですし、更に神様が天地創造の前に何をしておられたのかと考えると、気が遠くなる程の時間です。

時間や空間という概念が全く異る次元では、639年という時間も、緩慢な時の流れというより、長くも短くもない時間なのかもしれません。

私は《イコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集》
に、時間もリズムも超越した永遠のハーモニー、宇宙の調和を感じます。

そして、バッハの時間やリズムは、モーツァルトのそれとは全く異質です。
誤解を恐れずに言うならば、バッハにはリズムが無く、モーツァルトにはリズムがあると言った方が分り易いかもしれません。