レオポルト・モーツァルトは天才モーツアルトの父で、ザルツブルグ大司教宮廷副楽長を務め、ヴァイオリンや鍵盤楽器を教えていました。
彼は1756年、つまり天才モーツァルトが第7子として生まれた年に「ヴァイオリン教程」を著しました。
この著作はクヴァンツ、C.P.E バッハの著作を並んで18世紀の典型的なヴァイオリン奏法を示すものとして高く評価されています。
この「ヴァイオリン教程」の中から、音律について書かれている部分を引用します。
<クラヴィーアでは、変イと嬰ト、変ニと嬰ハ、変トと嬰へなどは同音であるが、それはTemperatur(調整)のせいである。
しかし、正しい音程比によると、♭によって低められた音はすべて、#によって高められた音よりも1コンマ高い。
つまり、たとえば変イは嬰トより、変ニは嬰ハより、変トは嬰ヘなどより高いのである。
ここでは良い耳が裁判官でなければならない。
もちろん初心者なら音程測定器の操作を教えてやるのもよいことであろう>
この著書の中で、変イと嬰トは正しい音程比から言うと高さが異なり、変イは嬰トより高いと教えています。
そして、最初の行でクラヴィーアでは変イと嬰トが同音、つまり同じ鍵盤であることをはっきりと指摘しています。
これに少し解説を加えると、ヴァイオリンは指で押さえる位置を微妙に変えることによって、変イと嬰トを異なる音として弾き分けることができますが、鍵盤楽器はこの2音が同じ鍵盤なので弾き分けることができません。
鍵盤楽器は片方を正しい音程比にすると、もう片方は非常に極端な音程比にならざるを得ないという不便な楽器です。
そのための妥協案として考案されたのが、どっちつかずの、どちらも正しくない音程に調整する方法です。
もし、鍵盤楽器で正しい音程比を追及しようとするならば、1オクターヴ内に12個
以上の鍵盤が必要です。
実際、1オクターヴに21個もの鍵盤がある純正調オルガンが製作されましたが、演奏困難なため普及することはありませんでした。
鍵盤楽器の調整法は、古典音律の時代を経て、19世紀も半ばを過ぎる頃になると、12等分平均律が台頭してきました。これは1オクターヴを12個の等しい半音に分割する合理的な方法で、現在殆んどの鍵盤楽器に採用されています。
現在の12等分平均律の鍵盤楽器は半音しか無いので、どこを取っても等しい音程、どこから始めても等しい音階、何調で弾いても等しい調性格です。
それにも関わらず、鍵盤楽器に調性格があるという妄想を抱いている人が少なからずいます。それには、主に2つの理由が考えられます。
まず第一は、ピッチの違いと調性格の違いを混同していることです。
12等分平均律ではピッチを上げ下げしても、音楽が平行移動するだけなので、音程関係は変わりません。
音程関係が変わったときにはじめて、調性格が変わるのですから、それは不等分音律においてしか起こらないことです。
第二は楽譜の調号に固定観念を抱いていることです。
それは楽譜の中に存在しているだけです。
楽譜は楽譜であって、単なる記号に過ぎず、音楽ではないのです。
音響としての調性格を存在せしめるためには、不等分音律の鍵盤楽器で弾かなくてはならないはずです。
しかし、多くのピアニストが平均律の鍵盤楽器を弾いています。
12等分平均律は無理数ですから、厳密にいえば等分ではないという理屈も言えないことはありませんが、その誤差をもって調性格とは言えないでしょう。
彼は1756年、つまり天才モーツァルトが第7子として生まれた年に「ヴァイオリン教程」を著しました。
この著作はクヴァンツ、C.P.E バッハの著作を並んで18世紀の典型的なヴァイオリン奏法を示すものとして高く評価されています。
この「ヴァイオリン教程」の中から、音律について書かれている部分を引用します。
<クラヴィーアでは、変イと嬰ト、変ニと嬰ハ、変トと嬰へなどは同音であるが、それはTemperatur(調整)のせいである。
しかし、正しい音程比によると、♭によって低められた音はすべて、#によって高められた音よりも1コンマ高い。
つまり、たとえば変イは嬰トより、変ニは嬰ハより、変トは嬰ヘなどより高いのである。
ここでは良い耳が裁判官でなければならない。
もちろん初心者なら音程測定器の操作を教えてやるのもよいことであろう>
この著書の中で、変イと嬰トは正しい音程比から言うと高さが異なり、変イは嬰トより高いと教えています。
そして、最初の行でクラヴィーアでは変イと嬰トが同音、つまり同じ鍵盤であることをはっきりと指摘しています。
これに少し解説を加えると、ヴァイオリンは指で押さえる位置を微妙に変えることによって、変イと嬰トを異なる音として弾き分けることができますが、鍵盤楽器はこの2音が同じ鍵盤なので弾き分けることができません。
鍵盤楽器は片方を正しい音程比にすると、もう片方は非常に極端な音程比にならざるを得ないという不便な楽器です。
そのための妥協案として考案されたのが、どっちつかずの、どちらも正しくない音程に調整する方法です。
もし、鍵盤楽器で正しい音程比を追及しようとするならば、1オクターヴ内に12個
以上の鍵盤が必要です。
実際、1オクターヴに21個もの鍵盤がある純正調オルガンが製作されましたが、演奏困難なため普及することはありませんでした。
鍵盤楽器の調整法は、古典音律の時代を経て、19世紀も半ばを過ぎる頃になると、12等分平均律が台頭してきました。これは1オクターヴを12個の等しい半音に分割する合理的な方法で、現在殆んどの鍵盤楽器に採用されています。
現在の12等分平均律の鍵盤楽器は半音しか無いので、どこを取っても等しい音程、どこから始めても等しい音階、何調で弾いても等しい調性格です。
それにも関わらず、鍵盤楽器に調性格があるという妄想を抱いている人が少なからずいます。それには、主に2つの理由が考えられます。
まず第一は、ピッチの違いと調性格の違いを混同していることです。
12等分平均律ではピッチを上げ下げしても、音楽が平行移動するだけなので、音程関係は変わりません。
音程関係が変わったときにはじめて、調性格が変わるのですから、それは不等分音律においてしか起こらないことです。
第二は楽譜の調号に固定観念を抱いていることです。
それは楽譜の中に存在しているだけです。
楽譜は楽譜であって、単なる記号に過ぎず、音楽ではないのです。
音響としての調性格を存在せしめるためには、不等分音律の鍵盤楽器で弾かなくてはならないはずです。
しかし、多くのピアニストが平均律の鍵盤楽器を弾いています。
12等分平均律は無理数ですから、厳密にいえば等分ではないという理屈も言えないことはありませんが、その誤差をもって調性格とは言えないでしょう。