ベートーベンの悲愴ソナタは調号の♭が3つ付いたハ短調です。ベートーベンに限って言えば、ハ短調は悲劇的な感情に満ちた作品を支配しています。

これはベートーベンが作曲する際に弾いたピアノがキルンベルガー音律であったことと深い関係があります。キルンベルガー音律のハ短調はピュタゴラスに近い主和音と中全音律に近い属和音を持ちます。これらの特徴が、ベートーベンにとっては悲劇的な感情と強く結びついていたのでしょう。

もし、ベートーベンが平均律のピアノで作曲していたらどうなったでしょうか。平均律は主和音も属和音もすべての和音が同じ響きをもつモノトーンの世界です。すべての調が均一ですからハ短調だけが悲劇的なわけでも何でもありません。平均律に調性格は存在しません。

ベートーベンが調にこだったのは調性格が存在した証拠です。
つまり、調性格が存在する不等分音律のピアノで作曲したからに他なりません。

平均律のピアノが普及したのは大体ドビュッシー以降ですから、古典派やロマン派の作曲家の殆どは不等分音律のピアノで作曲したことになります。

現在、私たちは平均律のピアノを弾いています。平均律に調性格は存在しないので、ベートーベンの悲愴ソナタをハ短調で弾いてもその他の調と比べて、特に悲劇的な感情が感じられるわけではありません。悲愴ソナタを何調で弾いても同じです。悲愴的な感情は和音や旋律にあるのであって、ハ短調という調にあるわけではありません。

奏いう訳でイコール式はすべての調性音楽をハ長調とイ短調に移調して考える合理的な記譜法を用います。すべての長調はハ長調にすべての短調はイ短調に移調しますから、ハ短調の悲愴ソナタはイ短調に移調して弾きます。ハ短調とイ短調は短3度離れますが、そのことによって音楽の和音や旋律は変わるのではありません。

音楽は音の高さ=周波数で変わるのではなく、和音や旋律で変わるのです。
例えばバッハは普通より短3度高く調律されたオルガンを平気で弾きました。これは周波数からいえばイ短調からハ短調に高くしたようなものですが、音楽は何ら変わりません。

イコール式は提案します。
これからはすべての調性音楽をハ長調とイ短調で弾きましょう。
すべての調はハ長調とイ短調からの移調として考えましょう。
もう調を表す#や♭は要りません。