やわらかなバッハの会 Soft Bach Society

先入観念にとらわれることなく、バッハの音楽に親しむ会です。
イコール式音楽研究所  所長  橋本絹代
Equal Method Music Institute President Kinuyo Hashimoto

2007年10月

バッハ時代のソルミゼーション

バッハが平均律クラヴィーア曲集第1巻の巻頭に書いた「長3度ドレミ、短3度レミファに該当するすべての全音と半音によるプレリュードとフーガ」と言う表現にバッハ時代のソルミゼーションが感じられます。バッハの巻頭の言葉は24すべての調を網羅した曲集と言う意味ですが、現代人なら、長3度をドレミ、短3度をラシドと書くのではないでしょうか。では何故バッハは短調を意味する短3度を「ラシド」ではなく「レミファ」と書いたのでしょうか。

これについて考えるにはグイードが考案したとされる6音音列のヘクサコードを簡単に説明しなくてはなりません。
ヘクサコードとは2オクターヴと6度に渡る声域を「ドレミファソラ」の6音を使ってムタツィオ(階名の読み替え)しながら歌う実践的な階名唱法です。ヘクサコードには自然、硬い、軟らかいの3種類があります。自然なヘクサコードはハ長調、硬いヘクサコードはト長調、軟らかいヘクサコードはヘ長調と考えると理解し易いでしょう。

ヘクサコードでは「ミファ」は必ず半音になります。また現在の「シ」に当たる音はフラットが付くときは「ファ」、ナチュラルあるいはシャープのときは「ミ」と歌います。余談になりますが、ナチュラルとシャープは同じ意味として用いられた時期もありました。

バッハの弟子であるアグリーコラ(1702〜74)が書いた「歌唱芸術の手引き」によるとムタツィオは上昇のときは階名「レ」によっておこなわれ、下降のときは階名「ラ」によっておこなわれました。また、バッハ時代の人々はハ調以外の長音階はすべてハ調からの移調として歌い、イ調以外の短音階はすべてイ調からの移調として歌いました

アグリーコラの方法で自然ヘクサコードから硬いヘクサコードに「レ」でムタツィオすると「ドレミファソレミファ」となります。これが今日で言う7音音列であるハ長調音階の歌い方です。

次に硬いヘクサコードから自然なヘクサコードに「レ」でムタツィオすると「レミファレミファソラ」となります。これが今日で言うイ短調自然音階の歌い方です。

ヘクサコードの大まかな説明に留めましたが、これでバッハが平均律クラヴィーア曲集1巻の巻頭に書いた「短3度レミファ」の意味がお分かりいただけたかと思います。バッハの時代、今日で言う短調は「レミファ」と階名唱しました。そもそもヘクサコードの中に「シ」と言うシラブルがないのですから短調を「ラシド」と階名唱することは不可能でした。

イコール式はすべての調をハ長調とイ短調から移調したものとして考えます。
バッハ平均律クラヴィーア曲集全48曲をハ長調とイ短調に移調したイコール式版を出版しました。





ドレミの意味

誰もが知っているドレミにはどんな意味があるのでしょうか。
音の名前であることは確かですが、音の名前には、音の機能を表す「階名」と、音の高さを表す「音名」の2通りがあります。異なる意味を持つ2つのものが同じドレミで歌われるのは何故なのでしょうか。

歴史上初めてドレミを考案したのは995年頃に生まれたとされるグィードです。彼はイタリアのベネディクト修道院で学んだ修道士で、少年聖歌隊の指導にあたり、中世教会の音楽理論を大成させた人として有名です。彼はドレミを使って、階名唱法を考案しました。ドレミというシラブルは「聖ヨハネの賛歌」から取ったものです。この歌は各行の最初の音が音階順に上がっていくことから、各行の頭の文字を取ってドレミ〜と並べました。従って、各行の頭の文字を連ねたドレミ〜そのものに詩的な意味があるわけではありません。グィードが発案したドレミは今日も音階の組織を表す「階名」として重要な意味を持っています。尚、階名唱法を容易にし、音階の組織を覚え易くする「グィードの手」は彼の名前を取って名付けられたものです。

ここで大切なことは、ドレミは本来、音階の組織を表す「階名」であったということです。16世紀までのドレミは6音の音階であるヘクサコードに基づいて実践されました。その後第7音の「シ」を加えたソルミゼーションがこれに代わりました。「ド」は音階の開始音であり主音としての機能を持ち、「シ」は導音としての機能を持つなど、ドレミはそれぞれの機能を表しています。「ド」には「ド」の味わいが「シ」には「シ」の味わいがあるのです。

「ド」は主音の機能を表す名前です。従って「ド」の音の高さとは関係がありません。調によって「ド」の音の高さが上下しても「ド」の味わいが変わるわけではありません。

ところが、鍵盤楽器奏者は「ド」の味わいを持っている音でっても、音の高さが「ド」でない場合は「ド」以外のシラブルで認識します。これは音名唱法あるいは固定ド読みと称されるもので、「ド」の味わいを無視して歌う方法です。
この方法は例えてみれば、人参の味なのに、舌の感覚を裏切って大根や胡瓜や茄子と呼ばなくてはならないという誠に不合理なものです。

音の機能を表す「階名」に対して、音の高さを表す「音名」を、外国ではアルファベットのABCDEFGを用いることで峻別しています。日本のように「階名」も「音名」も区別なくドレミで歌うのは混乱を招くだけで百害あって一利なしです。外国では「階名」にはドレミ、「音名」には「ラララ」等と異なるシラブルを用います。外国人にとってはABCDEFGの文字だけが「音名」なので、「音名」を歌うときは母音等を用いるのです。

日本でアルファベットに相当するものはイロハニホヘトですが、これも外国と同様に文字だけが「音名」として認識されています。イロハは主にイ長調やロ短調といった調性を表す時に用いられます。従って「音名」を歌うときは母音等を使うべきでが、嘆かわしいことに日本ではドレミが用いられます。

ドレミを「階名」と「音名」とに混同して使うことは明らかな間違いです。ひいては「グィードの手」以来大切にしてきた「階名唱法」としてのドレミを骨抜きにしてしまう大問題です。

音階組織の中で各音が持つ機能を表す「階名」を大切にしながら、しかも「音名」としても歌うことが可能な調はハ長調とイ短調の2つだけです。イコール式はまさにこの理由からハ長調とイ短調に限定した教授法を提案しています。

ピアノの「真ん中のド」を初めて教える時に是非先生方に注意していただきたいことは、ハ長調の主音としての「階名」の「ド」であるということを生徒に教えることです。この指導が行われないまま、単に「音名」としての「ド」と教えられた生徒は音楽を正確に理解する道を閉ざされてしまいます。最初の段階から音楽理論と共にピアノを教えるためには「階名」が大切です。イコール式は、ドレミを音名として教授することに警鐘を鳴らし、正しい音楽の理解を支援するものです。
やわらかなバッハの会
〒753-0072 山口県山口市大手町
3−6 大手町ビル4F
毎週日曜日19:00 PM
毎週金曜日10:00 AM
毎月1回   対話集会18:00 PM
都合により日時を変更する場合もありますので初めての方は事前にご連絡ください

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マンスリーバッハ(毎月第2日曜日)
午後4時〜6〜時
場所:新山口駅構内

ライプツィヒ・バッハ音楽祭
2020年6月14日3:00 PM
ライプツイヒ福音改革教会

<プロフィール>
やわらかなバッハの会 
会長 橋本絹代
新しい鍵盤楽器記譜法「イコール式」の創始者

子供の頃、父と一緒に、バッハのフーガをピアノ分担奏で弾くことによって、声部進行を直感的に学び取り
バッハのとりこになった。
初級者でもバッハのフーガを楽む方法を提案している。

2007年 世界で初めての楽譜《イコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集》カワイ出版 

2009 音楽書『やわらかなバッハ』春秋社

2013「やわらかなバッハの会」設立

2014 バッハ礼讃音楽祭 (於 旧県会議事堂) 毎年開催

2016 バッハ・イン・ザ・サブウェイズ (於 新山口駅構内)毎年開催

2017 Bach Network UK 対話会議研究発表 (於 ケンブリッジ大学)

2017 Prof.Yo Yomita (富田庸) 講演会「バッハを嗜む」主催(於山口大学)

2018 Thomas Cressy 明治150年記念「日本の明治時代におけるバッハ受容」

イコール式とは「鍵盤楽器においてどの調も皆同じ」という意味です。
なぜなら12等分平均律の鍵盤楽器における調性とは、ただ高さのみによって識別される2つの旋法、すなわち長調と短調の性格だけに限られるからです。
12等分平均律は勿論のこと、不等分音律を前提に論じたマッテゾンでさえも「どんな調もそれ自体では、その逆を作曲し得ないほど悲しかったり楽しかったりすることはできない」と述べています。
異名同音、ピッチの変動、バッハの手による移調の試みなどを考慮すれば、《バッハ平均律クラヴィーア曲集》の中の難しい調を簡単な調に移調してまず親しむことが大切です。初級者は更にそれをアンサンブルで楽しむことが大切です。
やわらかなバッハの会は既成概念にとらわれず、自分自身の判断で音楽の本質を探究するところです。


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音楽の構造が良く解る










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<イコール式の意味>
*12等分平均律の鍵盤楽器においてはどの調も同じ(イコール)です *フーガの各声部は主従関係ではなく対等(イコール)です *12等分平均律の調律法はイコール・テンペラメントと言います *音名と階名が同じ(イコール)読み方です
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